CASE STUDY

CASE STUDY 009

今回のインテリアコーディネーター 前田 博子さん(ルキアプロジェクト株式会社 代表)

まえだ・ひろこ神戸女学院大学音楽学部声楽専攻を卒業後パリに留学。フランスでの生活経験からインテリアに対する興味を覚え、インテリアスクールで基礎を学ぶ。住宅メーカーのインテリアコーディネーターを経て、2008年にインテリア設計、デザイン業務を中心とする会社を設立。近年はオリジナルブランド「マダムルキア」としてインテリア商品の企画、デザイン制作・販売なども行っている。

ルキアプロジェクト株式会社 LUQUIA PROJECT Co.,ltd
TEL:06-6147-8331 FAX:06-6147-8351 HP:http://www.luquia.jp/

『開放的で心地よい、愛着仕様の住まい』(I邸)

I邸

 今回のナビゲート役、前田さんからご紹介いただいたのは、子育て中心に建てられたこれまでの住まいを息子さん世帯へ譲り、ご夫婦だけの住まいを新築されたI様宅です。
 それぞれに仕事を持ち、多忙な毎日を過ごされているお二人のライフスタイルを尊重し、こだわりを叶えるプランをじっくり練られた快適な住まいが実現しています。

『経験に基づく提案で、温泉地ならではの悩みを解決』

構造:木造/竣工:平成25年12月/設計:アトリエフォー(竹内博)

 阪急神戸線沿線の閑静な住宅街。そのなかに、息子さん宅となった母屋とI様ご夫婦の新居が同じ敷地内に建っています。
 お宅へ伺ってまず驚いたのは、真っ白い外壁とは対照的な真っ赤な玄関ドア。奥様が大学の音楽学部で教壇に立つ傍ら、研究や執筆をされていて「一見して音楽家と分かるものにしたい」というご希望から、ト音記号と五線譜がデザインされています。

構造:木造
竣工:平成25年12月
設計:アトリエフォー(竹内博)

玄関ドア:スチール製

玄関ドア:スチール製

明かり小窓のオーナメント

明かり小窓のオーナメント

 「母屋も私たちの新居も同じ表札ですので、お客様には赤いドアのほうです、とご案内します」と奥様。夜になると明かりとりになっている五線譜のガラス部分から家の灯りが外に漏れて、とてもキレイなのだそうです。
 また家の中でも、エントランスに音楽関係の絵画が飾られていたり、2階へ上がる階段に楽譜をイメージしたオーダーメードの手すりがあったり、音楽への思いが随所に感じられて、深い関心が伝わってきます。

階段手すり:アイアン製

階段手すり:アイアン製

『住まいの中に生まれた寛ぎホール』

 「前田さんは私たちのライフスタイルや好みを何でも知っておられるから、今回のインテリアにしても全部お任せしました」と全幅の信頼を寄せる奥様。そして建築家と前田さんと共に1年近くにわたりじっくりと設計プランを練っていったそうです。その中で特に重視されたのは、
   1.人が集まりやすく快適に過ごせる住まい
   2.老後の生活を考えたエレベータの設置
   3.研究資料などを効率よくまとめた書斎の確保
   4.大量にある食器や調度品を飾るスペースと収納
といった点でした。

 そこで建築家と前田さんは、1階に奥様が研究や執筆活動をされる書斎と生徒さんを教えるピアノ室を。2階にご主人のプライベートルームと書斎、さらに和室、リビングダイニング、キッチンをレイアウトしました。2階は、プライベートルーム以外が扉で仕切られることなく一つの大きなホールのように仕立てられていて、スキップフロアを用いそれぞれの独立性を確保しながら、非常に開放的に仕上がっています。I様宅ではこの空間を使って、よくパーティを開くそうです。
  「母屋の時もそうでしたが、人が集まる住まいというのは、コンセプトとして常にあります。主人が商社勤務だったので海外駐在を経験した際に、人が集まる楽しさというのを覚えました。家は自分達に安心で快適な空間であると同時に、人とお話するための場でもあると思っています。勾配天井を最大限まで高くとってもらい、とても開放的にできたので、お客様が『すごく居心地がいいから時間忘れる』って仰ってくださいますよ」と奥様も満足そうです。

スキップアップした書斎から見えるリビングダイニング

スキップアップした書斎から見える
リビングダイニング

キッチンから書斎をのぞむ

キッチンから書斎をのぞむ

 建築家はリビングダイニングの東向きに大きな窓を設け、母屋との間にある庭のシンボルツリーが眺められる視線計画も取り入れています。焦点距離をなるべく遠くにとることで心理的にゆとりが生まれ、さらに開放感を増幅させる手法です。

『住まいの中に生まれた寛ぎホール』

 「もともとは、シンボルツリーを囲むように母屋の南側で計画していて、もう建てられるかなというところまで設計ができあがっていたんです。でもちょうど代替わりがあって駐車場にしていたこちらの場所が使えることになったので、改めてプランを練り直しました。食器や調度品もたくさん受け継いだので食器棚や飾り棚も充実させてほしいと前田さんにお願いしたんです」
 ご主人の実家は、神戸港開港当初から元町で陶器やオリジナルバッグを扱う老舗のお店だったとか。いまではもう営まれていないため、代替わりで食器などが大量にI邸に集まってきたそうです。奥様はそれらをただしまっておくのはもったいない。美術館の季節展示のように、折々に入れ替えて飾りたいと考えられていました。
 「物って使ってこそ価値があると思います。古いものがとても好きだし、きれいなものがいっぱいあるので、いまのモダンな生活空間に合うよう前田さんとご相談しました」と奥様。廊下やエントランスのちょっとしたスペースを有効活用して作られたガラス棚は、まさに美術館の展示空間のよう。”見せる収納”でセンスよく、季節に応じた調度品が飾られています。

壁と天井はアレスシックイ、アルコーブ飾り棚の壁面には落ち着いた色合いの壁紙を使用
壁と天井はアレスシックイ、
アルコーブ飾り棚の壁面には落ち着いた色合いの壁紙を使用

 一方、2階キッチンにはたくさんの食器類を”見せない収納”でスッキリ片づける工夫も。対面キッチンのカウンター下には、先代から受け継いだアンティークなものから新しいものまでグラス類がぎっしり並んでいます。パーティのときなど、リビング側からお客様が自由に好きなグラスを使えるようになっているそうです。奥様も「片付くまでは大変でしたけど、一度、居場所が決まるとあとは楽です」と収納のしやすさに納得されています。

『漆喰と壁紙を効果的に使い分けて』

 前田さんは奥様のお姉さまと同級生という関係からI様宅とも交流が深く、これまでにも何度となく新築やリフォームに関わってこられたそうです。
 「母屋のインテリアも私がさせていただいたのですが、そのときは日本的でクラシックなスタイルにまとめていたので、今回はモダンなインテリアでまとめました。それと漆喰のグレード感ある空間性が絶対マッチすると思っていたので、アクセント的に壁紙を用いる以外は、天井も壁もすべて漆喰で統一するプランをご提案しました」
 I邸は白をベースに全体的にモダンな構成でまとめられていて、壁と天井には関西ペイントの『アレスシックイ』が使われています。但し「白一色では単調になるから」と、和室はイギリス製の壁紙を貼って個性的に、ピアノ室はウイリアムモリスの壁紙やカーテンでエレガントに、また建具はトープ色で統一し、トイレの内装は1階、2階それぞれのテーマごとに変化を持たせて完成度を高めています。

琉球畳と和モダンを奏でるイギリス製の壁紙

琉球畳と和モダンを奏でる
イギリス製の壁紙

ウイリアムモリスのデザインで統一されたエレガントなピアノ室

ウイリアムモリスのデザインで
統一されたエレガントなピアノ室

2階のトイレはイメージをがらりと変えて思い切りかわいらしく

2階のトイレはイメージをがらりと
変えて思い切りかわいらしく

『アレスシックイの演出効果』

 施主様は前田さんから提案されるまで、漆喰についてご存じなかったのですが、前田さんの提案だからやってみようと決心されたそうです。現在、新居に移られてからおよそ1年。アレスシックイの住み心地はどうでしょうか?
 「入居してすぐの頃、空気がきりっとしていると感じました。清潔感というのか、主人はアレルギー体質ですが咳が少なくなったみたいで、思っていなかった効果ですね。それから猫を3匹飼っていて、母屋の時は臭いが気になったので、新居には1階の猫用トイレの側に専用の換気扇を設けました。でもまだ1度も使わずに済んでます」とアレスシックイの健康や臭いに対する効果についても驚かれているご様子でした。
 そしてもう一つ、アレスシックイを施工して良かったと思われているのが、どんなものとも相性が良い漆喰の演出効果だそうです。
 「家全体がキャンバスみたいで、漆喰が何を置いても引き立ててくれるのがうれしいですね」と奥様。前田さんはさらにコーブ照明を使って、天上際からふんわりとした温かい光をつくり、住まい全体を品よく包む手法も取り入れています。漆喰の壁が間接光を乱反射して柔らかい光に変える特徴を効果的に使ったテクニックです。
 「夜来られたお客様が『わぁステキ!』って褒めてくださるの。いままでとは温かさが違うというか、間接照明の方がおもてなし感を演出できますね」

『住まいも人とともに成長していく』

 さまざまなところにこだわりと工夫がちりばめられた新居の完成度に大変満足そうな奥様ですが、一つ気がかりなところもあるとか。
 「壁が真っ白なだけに汚れが気になります。猫が壁沿いに歩いたり、物を運んだ時にこすって付いてしまった跡を消しゴムなどで消そうとしたんですが…」と少々、不安そうなご様子です。
 「壁紙と違って汚れたらサンドペーパーでこすったり、上からアレスシックイを塗り足せるので大丈夫ですよ。不均衡な厚みが出ても塗り重ねが醸し出す塗装ならではの重厚な味わいが、空間の新しい価値を生み出してくれると思います」と前田さん。そのフォローに奥様も頷かれていました。

 I邸ではご実家の倉庫で眠っていたアンティーク家具などを専門の職人の手で修復してもらい、新しい息吹を吹き込んでお使いです。前田さんセレクトのモダンな張り地が統一感を出し、漆喰の白とマッチして一層深みのあるインテリアエレメントとして生まれ変わっています。
 住まいはそこに暮らす人と一緒に成長し、装いを変えていくものでもあります。漆喰も人の手が加わりながらその家らしく歴史を刻み、熟成されていくのではないでしょうか。そうした変化も楽しみの一つとして、愛着仕様に仕立てていただければと思います。

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