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カラー フォー ユア ライフ (Color for Your Life)
第1回 - 子供たちが好む色

 この度、PXIインテリア専属アドバイザー保田からバトンを受け取り、コラムを執筆することとなりました石原です。私は『色』を専門にした仕事をしていますので、色を中心に日々思っていることや今まで進めてきた研究内容を通じて、皆さんに色の面白さをお伝えしたいと思っています。そして色彩豊かな生活に興味を持っていただければ、うれしい限りです。どうぞよろしくお願いいたします。

(執筆:関西ペイント CD研究所 色彩研究員 石原麻子)

子供たちの色彩環境を考える

 私が所属するCD研究所とは建築や工業製品、自動車のカラーデザインや新色を開発するところです。塗料には必ず色があります。機能と色彩で様々なものをコーティングするのが塗料の役目です。そして色彩は直接目に触れるものですので、とても大切な役割を持っています。皆さんの身の回りにある『色』について日々研究している部署なのです。

 さて、第1回目のテーマは、私が長く研究している『子供たちが好む色』を選びました。この研究を始めるきっかけとなった『学校の色』についてお話ししたいと思います。

 私たちCD研究所は神奈川県平塚市の景観アドバイザーの仕事をしている関係で、よく小・中学校の色彩設計を依頼されることがあります。最近は、新設されることは少なくなり、ほとんどが改修工事なのですが、中には20年近く塗替えていない学校もあります。学校はたくさんの子供たちが学校生活を送る場なので、どうしても校舎内の壁などは手やランドセルに擦られてしまいます。特に昇降口や階段など、多くの子供たちが行き交う場所の壁は、汚れや擦れで元の色が消え、灰色になっています。自分の家でもスイッチやドアノブ周りの壁は汚れが付きやすく黒ずんできますよね。階段も薄暗く、暗いときに点灯する照明も青白い蛍光灯が多いので、大人の自分でも早くその場を通り過ぎてしまいたい気持ちになります。

小学校の階段・昇降口・廊下・教室(平塚市)
小学校の階段・昇降口・廊下・教室(平塚市)

 教室も白っぽい壁にこげ茶の木の床で、私が子供の頃と同じ空間です。子供の頃はそれが当たり前でしたが、この仕事を始めてから「一日の大半を過ごす場所がこのような殺風景な空間で良いのだろうか?」と考えるようになりました。最近はインテリアの演出にこだわる人たちが多く、住まいの家具やファブリックを整えたり、子供部屋も海外のようにカラフルに仕上げる方たちが増えています。学校は勉強をする場所とはいえ、食事をする場所、友達と遊ぶ場所でもある生活の場です。ですから、学校も住まいと同じくインテリア環境を整えることは、とても大切だと思います。

 学校の色を決めるのは大人です。私たち大人が責任を持ち、子供たちにとって好ましい色彩環境を整えることが大切です。そのためには色彩感覚や想像力が必要になります。大人になって色を選ぶ機会が増え、洋服とか文房具などは選べるけれど、例えば家の外壁の色、インテリアの壁の色といった大きな空間になったとき、イメージがつかめないという方はおられませんか?

 色彩感覚は子供の頃に、ある程度養われるといわれています。子供の頃からインテリア空間の中で色を効果的に使い、組み合わせることを経験して養われます。海外では自分たちで自宅のインテリアの壁を塗り替える人が多く、家族で色を選び、家族で塗ります。幼い頃から豊かな色彩に触れる経験をすることで色彩感覚が養われ、大胆な色を壁に塗ったり、繊細で洗練された色を塗ったりと、インテリアの色彩を楽しんでいます。

食事やファッション、音楽など
子どもたちは何でも吸収して色彩感覚を養っていく。

 子供たちが持つ色彩感覚を育みたい、そのような思いから「子供たちにとって好ましい色彩環境」への関心が深まり、研究を始めました。 次回はその内容について書きたいと思います。

(#002 「子供たちへのアンケート」へつづく)

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