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カラー フォー ユア ライフ (Color for Your Life)
第1回 - 子供たちが好む色

子供たちへのアンケート

 今回は『子供たちが好む色』を研究するきっかけとなった『学校の色』への取組みについてお話ししたいと思います。

 私が建物の色彩設計を行うとき特に留意している点は、①どのような使われ方をするのか? ②そこを使う人はだれか?③建物の形状は? ④照明の色味は白っぽい蛍光灯の色か、白熱灯の赤っぽい色か? です。特に、長時間その場で過ごすことが想定されるインテリア空間の色彩設計には様々な配慮が必要になるので、学校の色彩設計を行う際は、主な利用者である子供たちに焦点を合わせ検討します。

図1:評価プロフィール(形容詞14対)

図1:評価プロフィール(形容詞14対)

 とはいえ、子供の気持ちを想像して大人である私が学校の色を決めたところで、子供たちが好む色彩環境になるのか非常に悩ましいところです。また、子供たちに「どんな色が良いか?」と聞き取り調査をしたところで、単なる個人的な色の好みの調査になってしまいます。そこで、私たちCD研究所が景観アドバイザーを務めている平塚市へ相談したところ、都市計画課と教育委員会の協力のもと、子供たちの気持ちを調査する機会を得られたのです。

 調査は、心理学的測定の一つであるSD法という評価方法を用いました。例えば「快適な ―― 快適ではない」「派手な ―― 地味な」のように、相反する形容詞を両極に置いた尺度を複数用いて、ある事柄に対して個人が感じる印象を調べるのに用いる手法です。皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?

 評価には子供たちが理解しやすいよう、通っている校舎の「教室」「昇降口」「廊下」の写真を元に、コンピューターグラフィックスでいくつかの配色パターンを作りました。配色パターンは、インテリア産業協会が開発した四つの配色型の「ユニティ」「ソフト」「ハード」「バラエティ」を使い、壁と床の配色で表現しました。

図2:配色型について
図2:配色型について

それぞれの配色型の特徴は、以下の通りです。
●「ユニティ」はトーンと色相が同一または類似で、すっきりと落ち着いた印象の配色型
●「ソフト」はトーンが同一または類似、色相が対照で、落ち着きの中にも変化がある配色型
●「ハード」はトーンが対照、色相が同一または類似で、メリハリがあり力強い印象の配色型
●「バラエティ」はトーンと色相が対照で、にぎやかで楽しい印象の配色型

 なお比較用として「現状」も評価対象にしました。「教室」と「昇降口」の現状の配色型は「ハード」で、「廊下」は「ユニティ」です。評価に協力してくれた子供たちは、小学校5年生の男女113名、そして先生方にも協力してもらいました。評価中、子供たちはとても真剣に取り組んでくれました。

 評価結果ですが、子供たちは全ての場所において「バラエティ」の配色型が最もふさわしいと評価しました。そして、三つの場所に共通して評価が高かったのは「変化のある」という形容詞でした。これは子供たちが「変化のある配色の空間」を好む傾向にあるということです。

 先生方は「昇降口」と「廊下」が共有空間という意識から、「快適な」「清潔感のある」「リラックスした」という形容詞に評価が集まり、落ち着いた空間である「ユニティ」が最もふさわしいと評価しました。また教室は、子供たちと同じ「バラエティ」でした。さすがに先生方は普段子供たちと接しているため、子供たちが最も長い時間を過ごす「教室」は、子供の視点での評価となったのかもしれませんね。

図1:評価プロフィール(形容詞14対)

写真:評価サンプル

 一方、子供たちも先生も最もふさわしくないと評価したのは「現状」でした。これは手あかや擦れなどで汚れた壁や床などのイメージが、評価に影響を与えたのではと考えられます。
配色パターンだけで見ると、子供たちは「昇降口」と「廊下」は「ハード」、「教室」は「ユニティ」がふさわしくないという評価でした。「地味な」「面白みがない」という形容詞に強く反応しており、子供はどんな時でも楽しさを求めているものだと改めて感じました。先生方も「昇降口」と「廊下」は子供たちと同じ「ハード」、「教室」は「ソフト」をふさわしくないと評価しました。形容詞は「清潔感のない」「緊張感のある」に反応していました。

■子どもたちの評価結果

  1位 2位 3位 4位 5位
昇降口 バラエティ ソフト ユニティ ハード 現状
廊下 バラエティ ユニティ ソフト ハード 現状
教室 バラエティ ハード ソフト ユニティ 現状

■先生方の評価結果

  1位 2位 3位 4位 5位
昇降口 ユニティ バラエティ ソフト ハード 現状
廊下 ユニティ バラエティ ソフト ハード 現状
教室 バラエティ ユニティ ハード ソフト 現状

 このことから、子供たちは変化のある楽しい色彩空間をふさわしいと考え、大人(先生)たちは場所の特性ごとに明確なイメージを持っていて、不特定多数の人が使う場所は落ち着いた清潔感の感じられる雰囲気がふさわしい、と考えていることがわかりました。

 さて、これらを元に私たちは小学校の色彩設計を考えました。どのような校舎に生まれ変わったのかは、次回を楽しみにしていてくださいね。

(#003 「完成した学校」へつづく)

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