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カラー フォー ユア ライフ (Color for Your Life)
第2回 - 海外の建物

スイス医療施設 その2

 前回はスイスの医療事情について書きました。今回はスイスの医療施設における内外装の色などを紹介します。

■Sradtspital Waid Zurich(ワイド国立病院 チューリッヒ 1953年設立)

 ワイド国立病院という高齢者専用の病院です。患者さんの平均年齢は83歳とのことでした。

 まずは外観から。
この病院はぶどう畑の続く田園地帯を通り過ぎた小高い丘にあります。遠くからも望めるため、背景である山に溶け込みやすいグレイッシュブラウンの屋根と濃いめのベージュが外壁に使われています。別棟はオレンジと明るい黄みのグリーンの外壁です。グリーンは外壁に使うのが難しい色なのですが、隣にオレンジの建物があることで、お互いが色の印象を中和させて周辺と馴染みやすくなっています。建物の高さも3階程度の低層なので敷地の中で、ほど良いアクセントになっていました。

Sradtspital Waid Zurich(ワイド国立病院 チューリッヒ)

 ところで、なぜグリーンは外壁に使うのが難しい色なのか気になりますよね?
それは、アースカラーと呼ばれているベージュやクリーム色などの黄赤(YR系)と比べて、緑(G系)や青(B系)、赤(R系)は大面積に塗ると鮮やかさがアップして見える特性があるため、思ったよりも派手な色になってしまい、「イメージしている色と違う!」ということになりやすい色といえるからです。

 下の写真は色見本帳で色相(色み)だけ異なり、明度(明るさ)と彩度(鮮やかさ)は同じ色票を並べたものです。マンセル値でいうと左が色相:黄赤系の10YR 8/1、右が色相:緑系の5G 8/1です。

 いかがでしょう、右の緑系の方が鮮やかに見えませんか?

色見本帳/左が色相:黄赤系の10YR 8/1、右が色相:緑系の5G 8/1

 日本の景観法でも色彩基準の彩度区分を色相ごとに分けている事例が多いですね。
例えば東京都の景観色彩ガイドラインではYR系~5Yの明度6以上8.5未満の場合、彩度の上限は3以下です。一方それ以外のG系、B系、R系などは彩度1以下に設定されています。これは色相ごとに持つ特性を考慮した結果から決められた基準があるからなのです。

東京都景観色彩ガイドライン
東京都景観色彩ガイドライン抜粋

 さて、スイスの病院に話を戻しましょう。
今回のスイスの病院では豊かな自然環境の中で明るい黄みのグリーンの外壁が景観に溶け込んでいました。このような景観でグリーンを使う場合は、自然の樹木の緑より低彩度の色を使うと溶け込みやすいのですが、明るい黄みのグリーンがなぜ溶け込んでいたと思いますか?

左が落葉樹、右が常緑樹

左が落葉樹、右が常緑樹

 要因の1つに樹木の種類があげられます。樹木には大きく分けて寒い季節になると葉を落とす落葉樹と1年中緑色の葉をつけている常緑樹がありますが、落葉樹の葉の色は柔らかく明るいトーンで黄みよりのグリーンが多く、松や椎の木など常緑樹の葉の色は深くて暗いトーンのダークグリーンが多いです。このスイスの病院の周りには落葉樹が多く、また敷地一面に生えている芝生の色も明るいトーンの黄みよりのグリーンでした。そのため明るい黄みのグリーンの外壁が景観と調和していたのです。もし逆に常緑樹の深くて暗いトーンの樹木の中にあったら、おそらく目立ち過ぎていたでしょうね。

 さらに隣接する建物のオレンジ色よりも鮮やかさを抑えることで【オレンジの建物⇒グリーンの建物⇒芝生】と色のトーンの流れができています。比較のためにシミュレーション画像を作りました(下部画像参照)。左側がオリジナル画像です。右側がオレンジの外壁と同じくらい鮮やかさをアップしたものです。いかがでしょう、右側の画像はオレンジとグリーンの建物が主張して少しうるささを感じませんか?

オリジナル画像

オリジナル画像

鮮やかさをアップしたシミュレーション

鮮やかさをアップしたシミュレーション

 最後に、この病院には退院後に自立した生活が送れるようリハビリができる建物も入院棟に併設されています。リハビリといっても食事作りや洗濯など日常生活を送るためのリハビリ施設です。というのも患者さんのうち70%の人が退院後は自宅に戻り、一人暮らし、もしくはご夫婦で生活するそうです。そのための施設があるなんて、さすが自助努力の国スイスですよね。

 外観はヨーロッパの田舎にある小さな家そのもので、外壁はベージュで窓枠がブルーグリーンでとても可愛らしかったです。窓枠は小さい面積なのでアクセントの位置づけになります。ですから落葉樹や芝生、外壁のベージュと対比するブルーグリーンが強調され、より効果的なアクセントとなっていました。

リハビリ施設

 スイスの国立病院の外観いかがでしたか?
色は少しの違いで景観に溶け込んだり、強調されたりするものです。スイスもそうですがヨーロッパは色使いのセンスが抜群で、色使いのさじ加減が本当に上手でした。 皆さんもヨーロッパに行かれた時は、今回のレポートを参考に「建物と環境との色彩調和」という視点で観察してみてください。きっと外観色の提案の参考になると思います。

 次回はインテリアについて書きたいと思います。お楽しみに!

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