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カラー フォー ユア ライフ (Color for Your Life)
第2回 - 海外の建物

スイス医療施設 その6 ジュネーブのオーボンヌ病院

 今回からジュネーブに場所が変わります。
 オーボンヌ病院は、ジュネーブの中心地から約38㎞離れたオーボンヌ市に位置するリハビリと緩和ケア専門の病院です。
 傾斜した葡萄畑の中の細い道を進むと、この病院があります。道路側からは2階建てに見えますが、傾斜地に建てられているため実際は4階建てです。前回のチューリッヒの病院もそうですが、高台に建つ病院が多いと感じました。
 オーボンヌ病院の外観はメインカラーがピンクで、エレガントな印象を感じさせます。とても古い病院だそうですが、定期的に外壁塗装を行っているためキレイでした。

周辺に広がるワイン畑

周辺に広がるワイン畑

周辺の風景。遠くにアルプスの山々を望む

周辺の風景。遠くにアルプスの山々を望む

道路側から見た建物

道路側から見た建物

庭側から見た建物

庭側から見た建物

 建物内に入るとエントランスの先には食堂があります。 外観と同じでピンクの壁に同系色の床タイル、テーブルはナチュラルな木、イスは鮮やかな赤でした。
 スタッフも患者さんも同じ空間を利用していて、一緒に食事をとりながらコミュニケーションをとる姿も見られました。食事をとっている患者さんはお洒落をしてお化粧もきちんとして、優雅に食事を楽しんでいました。

食堂コーナー

食堂コーナー

 他の施設もそうですが、食堂が病院とは感じさせない造りで、食べることを楽しむための環境づくりがなされていると感じました。食事はただの栄養補給ではなく、人生を楽しむための一つの要素なのですね。
 入院している患者さんは、自室で食事をすることもあります。ちょうど病室へ運ばれる食事を見ることができたのですが、驚いたことがありました。料理が冷めないように一つ一つのお皿にステンレスの蓋がされ保温されていたのです。蓋を開けて料理を見せてもらうと、ポークステーキにポテトと焼きナスでした。これにパンが付きます。そしてスープとデザートのケーキもありました! そしてきちんとナイフとフォーク、デザートスプーンがレストランのようにセットされ、当然お皿は陶器です。食事の見た目も決して病院食ではなく、普通の食事ですよね。改めて食事に対する心意気を感じたひと時でした。

患者さん用の食事。温かい状態で食べられるよう保温されている
患者さん用の食事。温かい状態で食べられるよう保温されている

 食堂の横にはいくつかの談話コーナーがあり、つながった一つの空間になっています。とても広い空間なのですが、食堂は天井を高くして開放的な雰囲気になっている一方で、談話コーナーは天井を低くしたり梁を付けたりして高さに変化が付いていたり、照明の明るさを変えたり、家具の種類を変えることで空間が仕切られていました。どのような空間が一番心地よく感じられるかを考えた空間造りですね。壁で仕切らないため、スタッフの目も届きやすいそうです。

様々なタイプの談話コーナー。1 人で使える場所や複数人で使える場が用意されている
様々なタイプの談話コーナー。1 人で使える場所や複数人で使える場が用意されている

 レストランを抜けると病棟廊下につながるのですが、この廊下には窓がありません。そのため廊下の壁には窓の絵と窓の先に広がる様々な風景画が描かれていました! いわゆるだまし絵です。広い草原の先にある大きな1本の木を描いたものや、お花畑が広がる絵などです。そして絵から絵をつなぐように1本のリボンがドアや廊下の壁にも描かれていました。奥行感を感じさせる絵を見ていると、本当にその風景があるかのように感じてしまいました。
 窓が無い廊下で薄暗いため、絵を描くことで明るく楽しい雰囲気にしているのですが、その絵にも工夫があり、どれも開いた窓が描かれていました。まるで心地よい風が窓を抜けて室内に入ってくるように描かれた絵は、見る人にヒーリング効果を与えるそうです。飾ってある絵と異なり、直接描かれたことで本当にその風景が壁の先に広がっているような錯覚を覚えました。

廊下に描かれた風景画。全ての絵がリボンでつながっている
廊下に描かれた風景画。全ての絵がリボンでつながっている

 廊下の一角には家族面談室のスペースがあり、緑色の床タイルにゆったりとした赤い革張りのソファーが置かれています。また、職員休憩室にも1人掛けの背もたれの高いクラシックなソファーが置かれていました。ゆったりと休憩できそうな雰囲気ですね。
 これまで見た施設もそうですが、ソファーや歓談スペースのイスやテーブルなどの家具は、一般家庭やホテルで使われているものと同じデザインが使われていました。家具に対する意識が高いこともそうですが、普段の生活の延長線上に感じさせることも大事なケアなのですね。

家族面談室

家族面談室

職員休憩室

職員休憩室

 病室は清潔感のある白い壁と、淡いピンクの床タイルといったシンプルな空間です。その代りウインドウトリートメントは病院らしからぬ雰囲気で、エレガントなレースのカーテンと大きな花柄のカーテンがかかっていました。窓枠は木製です。
 ここでもベッドには自分で起き上がれるように吊り輪がついています。

病室はシンプルな空間。窓辺はエレガントな装飾(逆光ですみません)
病室はシンプルな空間。窓辺はエレガントな装飾(逆光ですみません)

 病室にはベランダへ続く大きなフレンチドアのついた窓があり、なんとベッドを直接ベランダに出せるようになっています! たとえ起き上がれなくなってもベッドごと外に出て気持ち良い風や太陽の光を直接感じることができるよう配慮されているのです。
 また、ベランダには小さなテーブルとイス、外付けのブラインド、さらに日よけのオーニングが必ずありました。このベランダからは広大に広がるワイン畑やアルプスの山々(モンブランも見えました!)、さらにレマン湖を望むことができ、患者さんの憩いのスペースになっていました。

病室から出られるベランダ。各部屋に付いている
病室から出られるベランダ。各部屋に付いている

敷地内の遊歩道を散歩するご夫婦

敷地内の遊歩道を散歩するご夫婦

 この病院では、医療やケアを提供するのではなく、いかに家庭で過ごす日常生活のように落ち着いた時間を維持、提供できるかを実践しているように感じました。
 これまで見た施設もそうでしたが、患者さんの意志で好きな場所に行けて、好きに過ごせることが、人間らしさのために最も重要なのだと改めて実感しました。実際、入院している男性患者さんが歩行器を使用し、ご夫婦で散歩をしている姿を見かけました。その様子はまるで“自分の家の周りを散歩している”という日常生活のひとコマで、医療施設にいるという雰囲気を感じませんでした。

 スタッフも監視しているという意識はなく、必要であれば手を差し伸べるスタンスで同じ時間を共有する仲間のようでした。 日本ではどうしても病院や医療施設というと、病院側は「治療をする場所、提供する場所」、患者側は「治療を受ける場所、提供される場所」という認識が強いように感じますが、それではスタッフにも患者さんにも必要以上にストレスがかかってしまう場合があります。スイスの医療施設のように、患者さんができないことは手伝うけれど、できることは自分でやれる環境を提供することもこれから高齢者が増える日本には必要だと感じました。

 最後にこのコラムのシリーズに欠かせなくなってきているワインの話ですが(笑)、この病院は広大なワイン畑を有しています。病室から見えるワイン畑はこの病院のものです。
 私たちに昼食をふるまってくれたのですが、病院の名前入りボトルワインが登場しました! 赤と白があり、とても美味しかったです。料理もまるでレストランに出てくるような内容で前菜から始まり、メインはステーキでした! レストランにいるようなスタイルのシェフも挨拶に出てきてくれて、病院とは思えない雰囲気に感動したものです。 ワイン畑を所有するくらいですので、食事に対するこだわりに納得です。

廊下に描かれた風景画。全ての絵がリボンでつながっている
(写真左上)病院で保有する葡萄で作られたワイン
(写真右)振る舞われたランチ
(写真左下)病院で毎日料理を作っているシェフの方々

 次回は、広大な敷地に位置し大きな木々に囲まれた病院ジュネーブ大学付属病院グループの老年科専門病院についてです。お楽しみに!

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