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カラー フォー ユア ライフ (Color for Your Life)
第2回 - 海外の建物

スイス医療施設 その8 ジュネーブ大学付属病院 Hospital de Geriatrie(老年科専門病院)

アンケート調査風景

 スイス医療施設シリーズも9回目となりました。
 決して新しくはなく、むしろ築後の年数が経過している施設ばかりですが、そこで提供されているサービスや医療は現代でも参考になるような事例が多く、さすが福祉大国の一つであると改めて実感されたのではないでしょうか?

 今回ご紹介する施設は、ジュネーブから約9キロ離れたCollonge-Belleriveに位置するホスピスCESCO Collonge-Belleriveです。のどかな田園地帯に位置し、外観は穏やかなベージュで、南側のテラスには赤いサンシェードが取り付けられていました。中に入ると受付ロビーの床は白~ライトグレー~ダークグレーの大理石仕上げ。白い壁と木製壁装材が使われ、赤いソファーが配置されたモダンな空間でした。

アンケート調査風景

 また、ロビーのエレベーター扉は真っ白でしたが、病院内の事務所や倉庫などの扉は鮮やかなオレンジで塗られていました。白い壁とオレンジのコントラストが面白いリズムを空間に創りだしていました。

アンケート調査風景

 この病院の歴史は、1970年代初めにイタリアを代表する女優ソフィアローレンが、自分の妊娠中に体調を悪くした際、出産までジュネーブの医師が多大なケアをしてくれたことに感謝し、この病院を建てて寄付したことから始まります。当初は一般外科および産婦人科としてスタートしました。その後1973年のオイルショックにより、この病院を支えていた人々の資金がなくなり、経営困難になり閉鎖してしまいました。しかし、市が施設を買い取り、1979年に老人病院のパイオニアであるジャン・ピエール・ジュノー医師の下、継続治療センター(コンティニューケア)および緩和ケア(ホスピス)として再開し、現在に至ります。コンティニューケアとは、患者さんのための継続したヘルスケアサービス(保健・医療・介護)を提供するシステムです。
 この施設では緩和ケアも行われていますが、緩和ケアという発想は1967年にナースから医師になった緩和ケアのパイオニアであるイギリスのシシリー・ソンダースの考えに由来するそうです。シシリー・ソンダースのホスピス五原則に則り、患者さんの日常生活を妨げることなく、また、寝たきりなど一つの空間に閉じ込めることなく、痛みや不安、不眠、食欲不振などに対してそれぞれのアプローチを行うことを目的に運営されています。院内には多くのボランティアがいますが、中でも「耳」と呼ばれるボランティアは、患者さんやその家族の話を聞くことに専念する役目だそうです。

≪シシリー・ソンダースのホスピス五原則≫

①患者を一人の人格者として扱う
②苦しみを和らげる
③不適当な治療はしない
④家族のケア、死別の悲しみを支える
⑤チームワークによる働き

 この病院には、近郊のジュネーブ大学病院や開業医から患者さんが送られてくるとのことでした。ある時点まではそれらの病院で診るが、それ以上手の施しようがなくなるとここに送られてくるそうです。患者さんの平均滞在日数は3週間~4週間とのことです。
 ホスピスのため、具合の悪い方がたくさんいるのだろうと思ったのですが、病室のベッドに寝ている患者さんはほとんどいませんでした。これもこれまで見てきた施設や病院に共通して言えることですね。
 病棟廊下は先ほどのロビーのモダンに対して、アイボリーの壁にこげ茶のアクセント、ミディアムブラウンの木製のドアといったクラシカルなスタイルでした。イメージが異なるため、より落ち着いた雰囲気に感じられます。

 病室を見せていただくと、壁はアイボリーと木のナチュラル色、イエローのチェックのカーテンといったナチュラルなスタイルでした。病室の窓はここでも大きく、壁のほとんどが窓という造りで太陽光がサンサンと入り、外に見える景色は芝生と樹木と空といった気持ちの良い空間でした。病室にある洗面スペースのタイルはソフィアローレンが建てた時から使われているもので、温かみのあるデザインでした。

 さあ、患者さんはどこにいるのでしょう。
 この施設でも皆さん食堂やテラス、ロビー、庭などで家族や友達と過ごしていました。中でも食堂は、大きなガラス張りの壁でできた吹き抜けのある開放的な空間で、陽射しがたっぷり入るモダンでお洒落な造りです。この病院も患者さんとスタッフが同じ空間で食事をしたり休憩をしていました。食堂のショーケースには美味しそうなパンやケーキなどもありましたよ。

食堂スペース

 食堂やテラス以外にもこれまで見てきた施設と同じように、患者さんやスタッフがくつろぐためのスペースがこの病院にも用意されていました。中でも目を引いたのは壁の色がビビットな黄色とブルーグリーンで塗られた部屋でした。テーブルの天板やイスにも黄色やブルーグリーンが使われたその部屋は、力強い色彩に満ちていて、入った瞬間に気持ちが高揚したのを覚えています。

 この壁の色は、患者さんを元気づけるためにここで働くナースが考えた色だそうです。一般に、ホスピスという特性から静かにゆっくりとした時の流れを感じられるよう、リラックスや穏やかといったキーワードを基に色を考えがちですが、元気でパワーを感じさせる色をナースが選んだということに大きな意味を感じました。そしてどんな状況でも明るく心を元気にさせることの大切さを学びました。色に関しては人によって感じ方が異なりますので、特に病院の場合は色選定には十分な考慮が必要です。しかし、空間の一つにこのようなスペースがあっても良いのでは? と思うようになりました。

 イタリアの女優ソフィアローレンが建てた病院ということで、大理石が多用されていたり、モダンな空間があったりと、どこかイタリアンモダンな印象も感じられる建物でした。当初は産婦人科であり、現在はホスピスということは、人が生まれる時から最期を迎える時までをこの病院は担ってきたということです。穏やかで心が元気に日常生活を送れるよう配慮された空間に、色彩やデザインの重要性を感じ取ることができました。
 また、機能面や衛生面にも配慮されていて、特に興味深かったのは壁と床の接点が普通は直角ですが、若干曲線にすることで埃がたまらないようにしていたことです。確かに隅に入った埃は取りにくいですよね。曲線でしたら拭き掃除も簡単ですね。これは自宅にも取り入れたい技だと思いました。

 このように、スイスの医療施設では、清掃のしやすさも重要な配慮事項になっています。そして病院特有の臭気がここでもしなかったです。自宅で生活しているような雰囲気を損なわないようにするためには臭いの除去はとても大切だそうです。
 臭気は臭いの粒子が壁や床、ファブリックなどに付着することで生じます。そのため、スイスの病院は壁や床の拭き掃除はあたりまえです。一方、日本ではどうでしょう。壁の拭き掃除というと大変な労力を必要とするのであまり行われていないように思います。臭気対策には、あらかじめ臭いを除去する素材を使うのも一つの方法です。関西ペイントの漆喰塗料「アレスシックイ」は天然の漆喰をローラーなどで簡単に塗れるように改良したお薦めの商品です。臭気やウイルス除去、湿度調整に効果を発揮した多くの実績があります。ぜひ一度お試しください!

 さて、次回はジュネーブから車で1時間程のローザンヌに位置するFondation Plein Soleil a Lausanne(プラン・ソレイユ財団―民間公益団体)が設立した治療や介護が必要な高齢者のための施設を紹介します。アラン・ドロン『太陽がいっぱい(a Plein Soleil)』から命名したプラン・ソレイユ財団が目指す高齢者ケアの姿は日本では見られないような工夫が多くありました。お楽しみに。

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