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カラー フォー ユア ライフ (Color for Your Life)
第2回 - 海外の建物

スイス医療施設 その8 ジュネーブ大学付属病院 Hospital de Geriatrie(老年科専門病院)

 スイス医療施設シリーズもいよいよ最終に近づいてきました。
 これまで紹介してきた施設は自助努力や人間の尊厳を大切にするという共通点を持ちながら、それぞれが独自の取組みや工夫をしていました。
 今回ご紹介する施設は治療や介護を必要とする高齢者のために機能回復を目的とした訓練に力を入れており、長期入院で生涯を過ごす人や一時入所、デイケアなど様々な状況の高齢者を受け入れています。とても規模が大きい施設で、神経内科、内科、リウマチ、精神科や機能訓練、作業療法など心身の総合的なケアを行っています。
 ここでは様々な取組みをしていましたが特に色をインテリア空間だけでなく、機能面にも取り入れていた点についてお伝えしたいと思います。

 Fondation Plein Soleil a Lausanneは1969年にプラン・ソレイユ財団が私費を投じて設立した非営利財団です。財団の名前は『太陽がいっぱい(a Plein Soleil)』から付けられました。財団のシンボルマークも太陽が描かれています。
 この施設は、ジュネーブから車で1時間程の距離にあるローザンヌに位置しています。ローザンヌ市街から郊外の山間部へ進んだ辺りのなだらかな傾斜地を利用して集合住宅が広がっており、その一角にこの建物はあります。外観は周囲の集合住宅と類似していて、穏やかなベージュを基調にグリーンがアクセントに使われていました。

病棟廊下

施設周辺の集合住宅

病棟廊下

Fondation Plein Soleil a
Lausanne 外観

病棟廊下

プラン・ソレイユ財団のシンボルマーク

 施設のエントランスを入るとオレンジやブラウンのタイルが貼られた床が広がり、すぐ横にカフェスペースがありました。数名の施設スタッフがコーヒーを飲んでいました。スイスでは見慣れた光景ですが日本では患者さんとスタッフの休憩スペースが異なるせいか、このような光景はほとんど見かけないですね。
 とても広い空間ですが、天井が低めのため家庭的で落ち着いた雰囲気でした。

カフェスペース

カフェスペース

エントランスホールの床タイル

エントランスホールの床タイル

 1階からエレベーターに乗り、階を上がるとアトリエがあります。アトリエにはコンピューター室や作業療法室、キッチン、裁縫室など様々なリハビリ専門の部屋がありました。
 コンピューター室ではexcelを使って自分が受けるケアプランのスケジュール作成を行っていました。自分でケアのプランを計画するという点もさすがに自助努力の国ですね。

コンピューター室

コンピューター室

 作業療法室は様々な工具を使っての木工作業やカッター作業などを行っていました。本格的な工具や電動のこぎりを使っての木材カットなど、日本のホームセンターの一角を見ているようでした。海外ではDIYは趣味ではなく生活に欠かせないため、このような作業療法がとても大事なのですね。

様々な工具類

様々な工具類

糸のこぎり

糸のこぎり

木材カットの電動のこぎり

木材カットの電動のこぎり

 キッチンでは作ってから食べるまでの一連の作業を行います。ここでのリハビリのコンセプトは“食べる楽しみを維持する”ということ。時間がかかっても楽しみながら食べることを実践しています。棚にはケーキやクッキー、マフィンの型がたくさん並んでいて、電動ミキサーなどプロ顔負けの製菓機が設置されていました。調理師と栄養士の資格を持つスタッフがクッキーやジャム、パンを一緒に作り、スペースの一角にあるキレイなリボンや包装紙でラッピングして施設内のおやつとして出したり、売店で販売したりするそうです。また、施設内に生えているハーブを摘んできて、乾燥させて料理に使ったりすることも…。本格的ですごいですね。

ケーキの型などの製菓道具

ケーキの型などの製菓道具

電動ミキサーなど調理道具

電動ミキサーなど調理道具

ハーブ作り

ハーブ作り

ラッピングコーナー

ラッピングコーナー

調理器具

調理器具

 隣には洋裁や編み物のリハビリを行う裁縫室がありました。色とりどりの毛糸や生地がぎっしりと棚に用意されていて、見ているだけで何か作りたい気分になるスペースです。なんとここには機織り機が5台もあり、タペストリーなどを作っていました。外が見える窓辺の机では細かい刺繍作業をしている人たちもいました。リハビリの内容にヨーロッパの文化を感じますね。
 これらのスペースのインテリアの壁は工具や料理道具、糸や毛糸などが目立つようにそして、明るく感じられるようにクリーム色で塗られていました。

ミシンやアイロン

ミシンやアイロン

色とりどりの毛糸

色とりどりの毛糸

機織り機

機織り機

 そして“ESPACE DE STIMULATION(刺激部屋)”と呼ばれるスペースがあり、とても不思議な空間でした。
 ここは感覚を刺激するための部屋です。病気のため他人とのコンタクトができない人や、目や指先などしか動かせない人に様々な刺激を与えることで感覚を活性化していくことを目的に作られています。薄暗い間接照明とキャンドルの光、壁にはすだれのようなものが垂れ下がっていて、アジアンやエキゾチックな雰囲気を感じました。全体的に使われている色もベージュやブラウンなどアースカラーでした。太鼓や銅鑼、様々な国の打楽器を使った音楽療法などが行われています。利用者が横になるベッドはなんとウォーターベッドが! 寝そべるとプールで浮き身をしている状態に近く、体の力が自然と抜けて精神的な解放感ややすらぎを感じられるそうです。体の力が抜けている状態で、感覚だけを刺激するのに向いているベッドなのですね。よく考えられているなと思いました。

刺激部屋とウォーターベッド

刺激部屋とウォーターベッド

様々な国の打楽器

様々な国の打楽器

 それからもう一つ、社会生活に向けての訓練を目的とした“オアシス”と呼ばれているスペースがありました。ここは名前の通り憩いの場です。太陽の光、空気、温度、お茶、音楽、人との接触を促す場であり、様々な人と話したり、お茶したり、本を読んだり…。好きな時に好きなだけ居られる場です。憩いの場なので施設スタッフはここでは白衣や制服を着ないで利用者との距離を感じさせない工夫をしていました。他のアトリエ内のスペースは事前の予約が必要ですが、この部屋は月曜日に1週間のスケジュールをスタッフ側が作り、それを見た利用者が予約なしに好きに参加することができます。サービス面も充実していて、利用者の様態や症状にあった飲み物やおやつが出されるように気配りされているそうです。ボランティアの人たちが企画したプログラムもありました。黄色いカナリヤも飼われていましたよ。

オアシスの黄緑色の壁

オアシスの黄緑色の壁

くつろぐ利用者

くつろぐ利用者

オアシスで飼われているカナリヤ

オアシスで飼われているカナリヤ

 部屋の一角はサンルームのようになっていて、頭まで支えるイスがあり、そこに座ると天井から降りそそぐ太陽の光を全身に浴びることができます。インテリアの壁の色は黄緑色をアクセントにしていて、フレッシュで生き生きとした雰囲気を感じさせていました。黄緑色は、植物の生命力や再生力、そして若々しさや健康をイメージする色です。このオアシスの部屋に最適な色ですね。色が持つ意味を理解している上でこの色を選んでいると思います。というのも海外では色が人の心理作用に影響する力を利用して、心や体を元気づけて免疫力や治癒力を高める色彩療法(カラーセラピー)が医療現場などで活用されているからです。これまで見てきた医療施設でも鮮やかな色を壁に塗って入居者を元気にするなど、様々な場面で取り入れられていました。

サンルームスペース

サンルームスペース

作品が天井から吊るされ飾られている

作品が天井から吊るされ飾られている

 今回は作業療法室など、不特定多数の人が使う場所を中心にお伝えしました。次回は病棟や病室での色を活用した工夫についてお伝えします。お楽しみに!

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