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ペイント・ルネサンス(Paint Renaissance) 

漆喰空間の魅力-2

 例えば、今日の食卓に欠かせない“パン”は、その種類と多種多様な色形で舌だけでなく眼をも十分楽しませてくれます。それは、“小麦粉”と言う魔法の粉のお陰です。関西では、粉をベースにした食品を総称して「粉もん」と呼びますが、小麦粉はパン以外にも多くの食材に使われる現代に不可欠な素材です。建築材料にもまた現代には不可欠な“粉もん”が有ります。それが消石灰から生まれる漆喰です。“内装仕上げの女王”と言うべき漆喰は、石やレンガという仕上げの荒い構造材料を覆い、白く、肌触りのよい一様な仕上がりで、空間の形を素直に表現してくれます。

漆喰が使用されているローマの北東、旧都オルベテッロのホテルのロビー。アーチ状の開口部からパティオを望む。一見複雑な空間形状に見えるが、シンプルなヴォールト天井と随所に設けられたニッチが変化を感じさせている。

 一方で、現代建築に使われるコンクリートは、構造材料であるとともに建築に自由な形態をもたらします。コンクリートが固まる前のモルタルという建築材料は、古くから積石の接着剤や充填材として、また仕上げ材としても使われてきました。モルタルの主要成分セメントもまさに小麦粉のような材料です。これら魔法の粉に共通した特徴は自由な造形性です。写真はトリノのカステッロ広場に面するレ-ジョ劇場のアーケード空間です。この造形を見て皆さんはクラシカルに見えますか、それともモダーンに見えますか。

イタリア北部の都市トリノのアーケード(直列状のアーチの連続)街は有名だが、カステッロ広場に面するレ-ジョ劇場の前の天井は秀逸。ヴォールト天井の優美な曲面と曲線の造形。

 アーケードやヴォ-ルト、ドームなどは古代建築から使われているアーチ構造を基本とした積石構造で、様々な建築様式の歴史を経て今日でもなお建てられています。したがって、ディテールの施し方によってその構造物はクラシカルにもモダーンにも表現できるのです。ヨーロッパの建築は木造と違って開口部を埋めたり、穴を開けたり改装するたびにいろいろな材料を使いますから、パッチワーク状態にもなります。また、配管や配線工事であちこちを削っては、再び埋めてという作業を繰り返しています。

レンガ積みの壁を穿って通気管にガラリを取り付けた工事の跡。残った隙間は端材や残材で適当に埋めて漆喰を充填したまま。
壁の配線は壁の表面に溝を掘って漆喰で埋める。屋内も同様に行う。公共建築では情報配線や、非常灯配線で随所に蛇のような配線工事の跡が見られる。何れ綺麗に仕上げられる。
イタリアのサルジニア島の「小さなバルセロナ」と呼ばれる町アルゲ-ロの街で見かけた古いアーチの開口部。石で埋められてもアーチは残す。
イタリアのタルクイニアの国立博物館に保存されている古い壁。壁は幾度も 改修されたが、古い部分がそのまま残される。このような造形は欧州の街歩きをしていると何度も見かける。意識して名残を残す。

 そのような壁面も、たったひとつの材料、漆喰で何もなかったかのように仕上げることができるのです。全体を一様に仕上げることで一体感が生まれ、複雑な構造の形態を素直に残して空間の形のみを表現します。そこに光が廻ることで漆喰空間を一層魅力的にしてくれるのです。

(#004 「漆喰空間の魅力-3」へつづく。)

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