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ヨザン弥江子のデザインペイント

  “ペイント”と聞くと、どのようなイメージをされますか? 自由自在に色指定ができる。下地を選ばず塗り替え可能。自分で塗るのはちょっと大変。 今回のコラムでは、皆さんの良く知るペイントから、更にその先にある『デザインペイント』の分野について広くご紹介いたします。

(執筆:株式会社フォーアーツデザイン代表 ヨザン弥江子)

プロローグ

ペイントは自由自在な表現手段

 私は商業美術の分野で空間を彩る仕事を23年間続けています。店舗、ホテル、テーマパークから公共施設まで、塗料、画材、左官材料などあらゆる素材を使用し、様々なコンセプトに合わせてペイントのプロジェクトを納めてきました。これらの仕事は「塗装屋さん+更に付加価値」という作業で、実に楽しいクリエイティブな世界です。塗り方の手法も毎回試行錯誤し、あらゆる物を表現の道具にしています。新聞紙、木片、布、洗車用ブラシに歯ブラシ…。もちろん、筆や刷毛も使い、絵画的な手法を加えることもあります。そして昨年PXIワークショップで行ったステンシル技法も欠かせません。ペイント本来の役割である保護機能の上にデザイン的意図を加えて個性をもたせる。もはやペイントはペイントチップで色指定するだけのものではありません。ペイントをデザインできるのであれば、空間表現は自由自在です。

フォーアーツデザイン アトリエ作業風景

 制作には様々な材料、道具を使っています。刷毛、筆以外に、金ゴテ、ゴムベラ、スポンジ類、布類など表情をつくれるものはどれも素晴らしい道具として風合いを発揮してくれます。

京都KOTOWA 結婚式場 レセプション壁画(京都)

 版築仕上げをペイントで表現。メタリックを隠し味にし、地層のように立体感をもたせました。多くの色と道具を使い、最後に筆で効かせ色として、鮮やかなエメラルドグリーンを塗り込んでいます。左官仕上げとは違う少しモダンで絵画的な要素を表現しました。

デザインペイントという新しいジャンル

 これまで、床壁天井の仕上げが塗装となった場合、ペイントは配色のコーディネイトで終ることが常識となっていました。しかし、壁紙に様々なパターンデザインがあるように、ペイントにもデザイン性を持たせたら、どんなにコーディネイトの幅が広がることでしょう。私たちのアトリエでは、そこにしかないオリジナルな表情づくりのご提案を究極のサービスと考え、ペイントでデザインしています。ペイント本来の役割である表面の保護機能の上にデザイン的意図を加えて個性をもたせる。「塗装もしくは左官+付加価値」。私たちデザイナー&コーディネイターがよりクリエイティブであるためには、常識の範囲をはみ出すチャレンジが重要です。更には日本のライフスタイルのデザインキャパシティーを広げる大きなきっかけになることでしょう。

未来屋書店 天井画制作(幕張イオン内、子供の本売り場環境仕上げ)

 壁紙にステンシル技法でペイントし、天井に張り込みました。葉っぱのパターンは色ののせ方を変えて、少々絵画的に表現。張り込んだ後は大きな木陰が生まれ、優しく包み込むような空間になりました。

明神坂 環境壁画制作(秋葉原高架下、歩道内壁面保護及び美化)

 練塀をモチーフにしたモダンなデザイン。スタンプ技法によるトロンプルイユ表現で街を明るくアーティスティックに彩りました。トロンプルイユとは、ヨーロッパで空間演出によく登場する目の錯覚を利用した環境絵画です。腰の石積み、漆喰風の壁も描いて表現しています。元々暗く不衛生な通りでしたが、壁画が施されたことで、環境が一変しました。

これから求められる価値観

 今や日本人も気軽に海外へ行くようになり、食文化をはじめ、物、事、ライフスタイルは大きく変化しました。ボーダレスに流通が行われ、東京では世界中の物が簡単に探し出せるようになりました。もはや海外で買い物するよりもずっと安心で便利ですね。日本人の外国文化を広く取り入れる明るい国民性が、これからますますバラエティーに富んだ個性的な物を求めることでしょう。住宅においては、例えばビニールクロスより割れが入っても塗り壁の質感を好み、いつまでも朽ちない工業製品よりも木枠サッシュを選ぶ。いのちあるものが老いるように、やさしく年を重ねて変化するものは心地よく愛おしいものです。もう一つ先の、自分らしさを求めることの重要性。納得して個々が物と事を選ぶ時代の到来です。

アーティストCathy Conner 田舎のアトリエ (シアトル郊外)

 古い納屋を改造したキャシーさんの作業スペース。真新しい空間とは全く違う時を感じる空気が流れています。リノベーションでは元ある良さを崩さずに手を加えてゆき、自分らしいそこにしかない空間を作りあげてゆきます。素朴で力を抜いた感じが心地良く、持ち主の個性を感じます。

アンティークショップ(NY州北部)

 夏のアンティークフェアーで訪れたお店。ガラスケースに入れるような高価なものではなく、古い日用品を並べています。無造作な展示ですが、どれも絵になる物ばかり。天井からの自然光がさらに優しさを演出。あめ色になった木製品と壁の水色のコンビネーションが古くさく味わいを出しています。

デザインペイントを通して、ライフスタイルを考える

 今年はコラムに連動して、東京と大阪でセミナーとワークショップが開催されます。そこでも私がデザインペイントの世界と技法を直接皆さんにご紹介する予定です。デザインペイントは、五感に響くインテリアとしてどう人々の過ごす空間に貢献できるのか。その定義、技法を踏まえ、サスティナブルライフスタイルを意識したペイントの未来についてディスカッションしていきます。またワークショップでは、基本的な表現方法からわびさび、アンティーク仕上げなど、プロの手仕事をお伝えし、サンプル作りをします。より個性的に、クリエイティブに、デザインペイント活用法を楽しく探るプログラムです。心が躍る空間づくりを一緒に探していきましょう!

See You Soon!

<ヨザン弥江子・プロフィール>

デコラティブペインター、ミュラリスト。東京都出身。女子美術大学・工芸専攻卒業/FIDM スペースデザイン科(L.A校)卒業。家具会社勤務経て1992年、装飾ペイントの分野へ。1995年、個人事業開始。2000年、株式会社フォーアーツデザイン設立。商業美術を中心に空間を彩るペイントの可能性を追求。「社会に役立つアートとデザイン」をテーマに、技術者の育成、技法の開発等、国内外のペイントビジネス分野での活動を続けている。ベジタリアン、2児の母。好きな作家は、アートに一途な生き方も大好きなジョージア オキーフ。琳派を継承した工芸デザイナーであり日本画家の神坂雪佳。今夢中な事は、自分のアトリエの設計。出来るだけ自然素材を使用し、必要最低限の機能性を持った、アトリエ小屋兼実験室を計画中。

ヨザン弥江子

株式会社フォーアーツデザイン 代表取締役 アートディレクター
yozan@fauxartsdesign.com

女子美術大学 アート・デザイン表現学科 ヒーリング表現領域 壁画講師
http://www.joshibi.ac.jp/department/college/healing

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