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ヨザン弥江子のデザインペイント

自由気ままなペイント表現

(執筆:株式会社フォーアーツデザイン代表 ヨザン弥江子)

 数えきれない色の中から塗料を選び、スムーズな表面が空間を彩る。それが艶アリなら個性を表し、艶ナシならば協調性をかもし出す。時間の経過と光の変化で、色の見え方も24時間、見事に変化する。これが単色ペイントの最も美しい質感です。
 さて、その美しい単色塗りの先にあるのは、空間の価値を更に深める「デザインペイント」の世界。塗り分けしたり、パターンを施したり、絵的表現をしたり、もしくは金ゴテやゴムベラでテクスチャーをつけたり、と自由自在に表現できるスタイルです。

塗料はツールとなる

 ペイントの主な役割は保護と美観です。用途に合わせた種類とその機能性はどれも素晴らしく、選択に迷うほど。一般には材料としての塗料ですが、デザインペイントの分野になると、自由自在に空間をクリエイトするツールに変身します。ペイントはどんなイメージも作り上げることができる優れた手段。柔軟に下地通りの形に馴染み、また上から塗り重ねることさえ容易です。アンティークにしたり(エージング、ディストレス)、煌びやかにしたり(パール、ラメ)、わびさびを表現したり(緑青や鉄錆風仕上げ)、様々な手法でストーリー性を生み出すことが可能です。そう考えると塗料の使い方は、まだまだ未開拓というのが日本の現状。私たちクリエイター、デザイナーによって新しいペイントの表現を試み、新たな常識を生みだすことが、これからの空間価値を変えていきます。

イメージ優先のデザインペイント

 「どんな家が欲しい?」から空間デザインは始まります。その中でも間取り構成、スタイリング、素材選びは重要な要素です。
 では、「どんな壁が欲しい?」という質問はいかがですか? これは私にとって、とてもわくわくする質問です。家の中にどんな風景が欲しいか、どんなストーリーをもちたいか、思いをカタチにするところからデザインペイントのイメージ作りは始まります。住む人の思いはデザインペイントで叶えられることがたくさんあります。

■事例1 イメージづくり

私の仕事から室内の壁画プランをご紹介します。こんな空間が増えたら毎日が楽しいですね。

室内の壁画プラン テーマ『森に棲む』
■事例2 デザインペイントとの暮らし

 2人の海外アーティストの室内ペイントをご紹介します。沢山のデザインペイントが施され、それぞれの個性が輝く佇まいです。肩の力を抜いた心地良さがデザインペイントならではの空間づくりです。

アーティスト Lori Wilson(米国、ニューヨーク州ニューベルリン)

 祖母から譲り受けた古い木造2階建ての家に少しずつ手を加えて、昨年7部屋全てが完成しました。以前は絵の具メーカーの技術者だったことから、正しい知識と豊富なテクニック、ユニークなデザインセンスがあり、独特の世界観を見せてくれます。日本人には少しラフすぎると感じられるかもしれませんが、こんなカラフルで楽しい空間に住んでいたら、ライフスタイルから思考まで変化しそうですね。

キッチンの壁

<キッチンの壁>

2色のテクスチャーで覆われたキッチンの壁。下地はオリーブグリーン。ラフな手仕事が、朗らかで気取らない空間に仕上げています。ガーデンで育てた野菜はこの部屋で料理されます。

廊下の天井画

<廊下の天井画>

まるで思いのままに描いたような植物パターン。かわいらしい模様も空間の中ではすっぽりとシックな風合い。

エントランス天井画

<エントランス天井画>

柔らかい布を貼付けたような気ままなデザインの天井です。入り隅で塗り分けないのが粋な表現。落ち着いた赤が白い壁面をうっすらピンクに染めています。

家族史を残すバスルームの壁

<家族史を残すバスルームの壁>

もともとキッチンだった10畳程のスペースに、シャワー、浴室、バスダブ、トイレを設置。古い花柄の壁紙は剥がれるところだけ剥がし、上から樹脂を塗り付け底艶を出しています。広さといい、光の入り方といい、まるで部屋のような新鮮なバスルームです。

アーティスト Susan Arnild(デンマーク、オーフス校外)

 アンデルセン童話に出てくるような古い農家にデザインペイントを施し、素晴らしいファミリーハウスを完成させています。漆喰や油性、水性のペイント、箔等を自由自在に使いこなす彼女のスタイルは、ユニークなだけでなく洗練されたセンスを感じさせます。

リビングルームの床ペイント

(撮影:IB SOERENSEN)

<リビングルームの床ペイント>

白いオイルペイントの上に市松模様に焦げ茶色を擦り込み、床パターンを作っています。方法は至ってシンプル。既に古い床にリペイントしているので塗り分けだけでも風合いがでます。

リビングルームの床パターン

(撮影:IB SOERENSEN)

<リビングルームの床パターン>

シンプルな内装にも関わらず、リズミカルなパターンが室内を楽しい風合いに仕立てています。柔らかな空気が漂う特別な空間です。

ダイニングの天井画

(撮影:IB SOERENSEN)

<ダイニングの天井画>

サンルームのようなダイニングエリアには優しい鳥と植物の絵が描かれています。その絵に合ったライティングと瑞々しい植物がオーガニックさを感じさせ、彼女のセンスが伺えます。食器棚の素敵な器からお料理好きだとすぐにわかります。

フリッツハンセン セブンチェアー

(撮影:IB SOERENSEN)

<フリッツハンセン セブンチェアー>

彼女の手にかかればセブンチェアーもロイヤルコペンハーゲンデザインに生まれ変わってしまいます。ユニークな発想もペイントの可能性が見えるから。古い家具は塗り替えて使用するのがヨーロッパでは当たり前のことです。エコですね。

暖炉の部屋の天井画
(撮影:IB SOERENSEN)
<暖炉の部屋の天井画>
天井裏はあえて隠さず、天井を大きな装飾的な蓋ととらえると彼女は考えます。このデザインはベニスのセントマークスカテドラルの床のモザイクタイルからインスパイヤーされました。天井裏は北欧らしく木板貼り。目地を上手に活用してレイアウトしています。

テクニック:1

 ラインの交わる部分にはシルバー箔を施し、光り方に変化を付けています。
(撮影:IB SOERENSEN)

テクニック:2

 幾何学模様はマトリックスに塗り分けてゆくことで、いつの間にか仕上がる画期的な技法です。手塗りの色ムラは程よく味わいを出し優しい仕上がりになります。
(撮影:IB SOERENSEN)

自由気ままなペイント表現

 さて、単色ではない塗り壁を作るとしたら、どんなデザインにしますか。きっといくつかイメージが浮かんできたことと思います。デザインペイントは気軽に始められ、心地良い、とっておきの風景を創る便利な方法と知っていただけましたでしょうか。6月10日の東京セミナーと7月8日の大阪セミナーでは、様々なデザインペイントをスライドショーでご覧いただき、ペイントについてディスカッションをします。皆さんのクリエイティブの引き出しにデザインペイントを増やしていただくことができればと思います。そして次回のコラムは、海外事情として、イタリア、レッチェで行われるデコラティブペイントの祭典SALONについてお知らせします。セミナーもコラムもどうぞお楽しみに。

See You Soon!

<ヨザン弥江子・プロフィール>

デコラティブペインター、ミュラリスト。東京都出身。女子美術大学・工芸専攻卒業/FIDM スペースデザイン科(L.A校)卒業。家具会社勤務経て1992年、装飾ペイントの分野へ。1995年、個人事業開始。2000年、株式会社フォーアーツデザイン設立。商業美術を中心に空間を彩るペイントの可能性を追求。「社会に役立つアートとデザイン」をテーマに、技術者の育成、技法の開発等、国内外のペイントビジネス分野での活動を続けている。ベジタリアン、2児の母。好きな作家は、アートに一途な生き方も大好きなジョージア オキーフ。琳派を継承した工芸デザイナーであり日本画家の神坂雪佳。今夢中なことは、自分のアトリエの設計。出来るだけ自然素材を使用し、必要最低限の機能性を持った、アトリエ小屋兼実験室を計画中。

ヨザン弥江子

株式会社フォーアーツデザイン 代表取締役 アートディレクター
yozan@fauxartsdesign.com

女子美術大学 アート・デザイン表現学科 ヒーリング表現領域 壁画講師
http://www.joshibi.ac.jp/department/college/healing

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