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デザインペイントの時代が始まる⑤「塗装表現の可能性」

 「塗装表現の可能性」最終回は、ペイントの中でも絵画に近い特殊なテクニックをまとめてみました。例えば「デコラティブペイント」というジャンルの要素技術は、歴史的には壁画や天井画にも古くからあります。

 デコラティブペイントはさまざまに分類されていて、厳密には確定した定義はありませんが、この道の第一人者で、PXIペイントアカデミーの講師としてもおなじみの荒木俊成さんは、デコラティブペイントを「現代美術塗装」といい換えて、それを分かりやすく「アート仕上げ」(イメージに合わせたアート表現)、「エイジング仕上げ」(古く、味わいのある素材に見せる技法)、「疑似仕上げ」(石や木材といった素材の質感を再現する技法)の3つに分類されています。また、外壁にトリックで窓や人物などを描く「だまし絵」(トロンプルイユ)もデコラティブペイントに含まれます。これらは西欧で数百年の歴史があり、宮殿や邸宅で広く使われてきました。日本ではまだ馴染みの薄い技法ですが、近年日本でも商業施設やテーマパーク等で盛んに使われるようになり、荒木俊成さんも大型テーマパーク内のいくつかのアトラクショ施設をてがけておられます。

 同じくデコラティブペイントの分野で国際的に活躍されているヨザン弥江子さんは、環境デザインをも包含する「デザインペイント」という新しいジャンルを提唱されています。「デザインペイント」については、PXIコラム「ヨザン弥江子のデザインペイント」でもご紹介していますし、また2017年10月発行の建築専門誌『コンフォルトNo.158』でも表現技法として「カラ-ウオッシュ」「スポンジング」「ラギング」「ドライブラシ」「ドラッギング」「スリーエー」「コミング」等、多彩なテクニックが取り上げられています。

 これらの技法は内装だけではなく、街中の建築物外観やその他の構築物でスーパーグラフィックと呼ばれるアートとしても使われています。また街並景観の改善、防犯対策、その他メッセージの発信目的にも使われ、国内で事例が増えてきています。

疑似仕上げは単にそっくりに描くというよりは、模倣を超えて新たな表情をつくるところに価値が生まれます。

「だまし絵」といっても込められたメッセージ性は多種多様。
5層階の妻面に描かれた町の人々が、観光客を温かく歓迎しています。

 デコラティブペイントはプロの精巧な技術も素晴らしいですが、素人が描いたぎこちない作品にも親しみと温か味が感じられる分野です。馴れないと躊躇しますが、描き直しができるのもペイントの強みですから、ぜひチャレンジしてみてください。

  今回は、先にご紹介した荒木俊成さんの分類よりテクニック面に特化し、「エイジング仕上げ」「疑似仕上げ」「だまし絵」の事例をご紹介します。「アート仕上げ」は表現の幅が広いため機会を改めて取り上げることにします。

<4>デコラティブペイント

1.エイジング仕上げ

 近頃よく見るようになったシャビーなインテリアを演出する際に、家具や造作に使われるペイント技法です。

 空間やインテリアエレメントの仕上げ価値においては、新しさや美しさとは逆に、キズや退色、変色など、普通ならマイナスイメージになるところを、親しみや懐かしさなどの“味”として、またアンティークなイメージづくりとして、好んで使われています。

  塗装の歴史は、技術的に変色や退色、ヒビや剥がれ、汚れ、染みなどの劣化との戦いでしたが、一方では皮肉にもそれが味として認識されるとき、骨董的な価値を生み出すのです。使いこなされた親しみや受け継がれてきた歴史感がインテリア演出のジャンルとして存在感を高めます。

  廃品として廃棄される運命の家具も、「エイジング仕上げ」によって新しい存在に再生されます。DIYサイトやPXIがお届けしている雑誌『SPACES』にも、様々なテクニックが紹介されています。まずは気軽に、椅子などでトライしてみてください。

色やハケの風合いだけでなく、後工程でのキズや擦れ、剥がれなどの細工がさらにリアリティを高めます。

1.エイジング仕上げ

 (荒木さんのワークショップより)

 木目や代理石そっくりのペイントは、中世ヨーロッパの宮廷や城館で盛んに活用されていましたが、今日でも商業施設で見受けられる技法です。意外と簡単にできることから、ワークショップでは人気のメニューです。本物の木材や大理石が入手困難だったり、重量や施工場所に制約がある場合にも使われる手法です。

  荒木さんのワークショップなどでは、初めての方でも楽しめる手づくり感のある疑似ペイントをご紹介しています。

粗めのブラシをクロスさせることで織り柄を描きます(左)。その上にステンシルでバラのモチーフをあしらっています(右)。

目地型を取り付けた上から厚型の塗料を塗り込み(左上)、タイルやレンガの表情付けを加えます(右上)。

3.だまし絵

 壁に描いた小窓から、建築の側面いっぱいの風景描写まで、実在しないものがいかにもそこにあるかのように描かれたトロンプルイユと呼ばれる技法です。これも欧米の街中ではひんぱんに見かける風景です。通行人に錯覚を楽しんでもらうためのサービス精神によるユーモラスな素材や、装飾を超えて社会へのメッセージを発信するものまで様々な種類があります。

  インテリアにおいても、ファンタスティックな演出で心を和ませる情景描写や、現実感を高める効果が期待されます。

そっくりに描くのがトロンプルイユですが、稚拙に描くことであえて絵であることを分かりやすくしたり、アートのように描かれたものも楽しいです。

 デコラティブペイントは一見、プロのテクニックが必須のように思われますが、インテリア空間では素人の描いた作品でも新たなジャンルとして存在感が期待されます。プロの使う道具だけではなく、身近な材料を使っても豊かな表現ができますからチャレンジされてはいかがでしょう。

※内容に関して問合せや感想などありましたら、PXIサイト「お問合せ」をご利用ください。

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