PXI[ピクシィ]会議

PXI MEETING

インテリアコーディネートでもっと東北を元気に

 インテリアコーディネーター(以降IC)の皆さんに、住まいのインテリアや塗装、塗料について、率直なご意見を伺うために始まった[PXI(ピクシィ)会議]。第3回目は東北復興の原動力として精力的に活動されているICの関口和美さん、寺島きぬ子さん、歌川えつこさんを仙台に訪ね、当社専属アドバイザーである保田孝、東北販売部・早坂広行をまじえて、震災後の東北の住宅事情やIC活動の今後について伺いました。

復興とともに、少しずつ変わり始めた住まいへの思い

保田氏この度はお忙しい中、ご出席くださいましてありがとうございます。2011年3月11日に発生した東日本大震災からまもなく3年を迎えようとしています。この間ICの仕事環境や活動内容など、どう変わったのかとても関心があるのですが、その辺のお話からまず伺えますか?

関口さんどの業界、お仕事の方もそうだと思うのですが、最初の何カ月間かは自分たちの仕事がいますぐ役立つのだろうかとか、動けるだろうかとすごく不安に思いました。津波で家が流された方もたくさんおられ、その心中を察するとすぐに住まいの話をしてよいものか、気持ちが整理できない日が続きました。家も大事ですが、心のケアが先ではないかという思いに至りました。こういうことからお手伝いしていけるという道筋が見えるまでに何カ月かかかりました。

保田氏実際に仕事が再開できたのはいつ頃からですか?

関口さんマンションの内装のお手伝いを最初にし始めたのが5月末で、それから急激に忙しくなってきました。というのも、一旦気持ちが落ち着くと、とにかく仮設から出てマンションで落ち着きたい、震災で傷んだ家を建て直したいと言われる方が増えて、落ち着ける家をコーディネートして欲しいという依頼も来るようになりました。いま周りのICも忙しい方たちばかりですね。何とか被災者のお力になりたいと思えば思うほど、仕事は次から次へと増えていきます。

早坂特に仙台地区やその周辺では新築住宅の着工数がかなり増えていますから、ICのお仕事も大変かと思います。そうしたなかで、施主様が求められるコーディネートのイメージも、震災前と現在とでは変わっているのでしょうか。

寺島さん例えば照明器具ですが、震災直後は「ペンダントやシャンデリアは落ちたり割れたりすると危険なので天井直付けがいい」といわれて、1年から1年半ぐらいまでは減ってきていましたが、ここ最近、経済が上向いてきたこともあってシャンデリアが増えてきたのです。それだけ気持ちに余裕が生まれてきたのかなというのが一番大きな違いだと思います。
それから、2世帯同居が増えたということもあります。震災があったので寄り添って生きようということもあるのですが、収入面のことなどでローンを組めない若い夫婦も多く、広い家を建てて3世代で協力し合って一緒に住みたいと考えるお客様が増えたと思います。

保田氏そうですか。そういうことには気付きませんでした。それは大きな変化ですね。

寺島さんあともう一つ、平屋の住宅が増えたことです。ご高齢のご夫婦だけの場合、大きくなくていいので見える範囲で自分たちの住みやすいように、便利で温かい暮らしをしたいということで平屋も多くなりました。

早坂そういえばそうですね。私の近郊も平屋が増えています。

インテリアコーディネーターに求められる新たな役割

寺島さん内装に関していえば、自分たちで勉強している人がすごく多いですね。震災直後は住めればいいという感じだったのですけど、今度家を建てるときはこういうことをやってみたいとか、輸入の内装材を使ってみたいとか、最近になって心の余裕がインテリアの方へ少しずつ向いてきたのかなと感じました。

関口さん最初は「空間があればいい」「体育館の避難所に比べたら畳の上やベッドで休めるということだけでも涙が出るほど幸せだ」とお聞きする事が多く実際にそういう状況の方がたくさんおられたのよね。でもいまでは、例えばベッドにも「人生の3分の1を過ごすのだからこだわりを持ちたい」と、充実した生活を求められる方が増えたと思います。

寺島さん我慢してお金を貯めて将来にということだけのではなく、いまを大事にしたい、これからの生活を楽しく充実させたい、という思いが強くなったようです。そこは震災の影響もあるのではと感じます。

保田氏東北の人とか北陸の人は我慢強いといわれますが、我慢するだけではつまらないという方も増えてきているわけですね。人生観も変わりましたからね。
では、今回の出来事でICの在り方が変わったり、考え直すきっかけとなったようなことはありますか?

歌川さん最近、住まいづくりの講座などで被災地を回っているのですが、仮設住宅にいらっしゃる方の言葉ですごく重く感じたことは「いま、自分の家が落ち着かない」といわれたことです。その方が講座にいらした動機も、学びたいからだけじゃなくて、楽しみたくて来たと仰ってました。久しぶりに声上げて笑ったと言ってくださいました。その後も同じ東北人として、笑顔になれる機会を提供できたらいいなと思って活動しています。

保田氏歌川さんがされている活動は、もっともっと心の中から明るくしていこうという思いからですよね。ICの仕事にはそういったサービスメニューがなかったので、今度の天災をきっかけに新しい領域に活動を広げられたということですか? 他のお二人やお仲間ではどうでしょう。

関口さんICとしてホスピタリティ(思いやり)の要素が私たちに求められていると思います。インテリアの相談だけではなく「私たちが癒される住まいはこうなんですがどうでしょう」「インテリアがもたらす心理的な効果についても相談にものってください」という方が増えたと思います。

保田氏まず、心に思っていらっしゃることを聞きだすという、ある意味ではIC本来の仕事に戻ったということですね。

関口さんそこがやはり、一番大切だということに気付かされました。どのインテリアスタイルがいいとか、予算はどうかということ以前に、心から求められているお話が伺えるようになったように思います。

保田氏商談ではなくて相談の相手であることはICの原点で、今日の話題のポイントだと思います。そういうウエーブが東北から始まったことは、とても意味深いことですね。

気持ちを表に出し始めた東北のこれから

寺島さん震災を機に、ご家族や自分自身を見つめ直す方が多くなり、望んでいることを素直に前面に出してこられる方が多くなったかなと思います。以前は、安全で温かければいいということだけを求められていたように思うのですが、今はせっかく家を建てるんだったらこういうふうにしてみたいという、夢を実現しようとする方が多くなった気がして、いいことだと思っています。

歌川さん夢には二通りあって、ファンタジーみたいな実現はしないけど夢見る世界と、実現する夢があると思うのですね。こういうふうにしたいという実現できる夢にみんな気付いてきて、この震災は本当に大切なもの、本当に好きなものに気付いたきっかけになったのです。みんなのステキじゃなくて、その人その人の心地よい、ステキってあるのです。震災は大変だったけど、もしかしたらそこに気付くいいきっかけだったかもしれないです。

保田氏いままで東北の人は我慢強くて、自分の気持ちをあまり外には出さないというイメージがありました。東北の人たちに対する他県の人たちのイメージが変わるのはこれからでしょうね。若い人たちにも変化はあるのでしょうか?

関口さん宮城インテリアコーディネーター倶楽部(mic)では、2003年から小学校の子どもに住んでみたい部屋の絵を描いてもらう絵画コンテストを主催しています。家が流されたり倒れたりしている状況下で、そんなイベントをやっていいのだろうかと、ものすごく悩みました。でも楽しみにしている子たちもいる。少しでも絵を描くことで楽しい気持ちになるのだったらやっぱりやろう、ということで開催しました。

 
第11回仙台市長賞受賞作品
斎藤 叶実さん

受賞作品は実物大の部屋が再現
されて会場内に展示されている

 私個人は、被害の大きかった地域の子たちほど、暗い絵や寂しい絵が多いんじゃないかと勝手に思っていたのです。でもまるで違いました。被災する前よりも素晴らしい絵が多くて、明るさとエネルギーがあってアイデアにあふれた楽しい絵がいっぱいでした。これからを担う子供たちが、負けるものかと前向きにとらえているのだと絵を見て実感できました。

関西ペイント販売(株)賞受賞作品
舘田 梨里花 さん

早坂関西ペイントでも「関西ペイント販売(株)賞」を設けて協賛しているのですが、今回初めて審査員をやらせていただきました。子供たちの絵は本当に一生懸命描かれていて、ユーモアがあり、それぞれ魅力的で甲乙つけがたかったです。あのエネルギーはすごいと感じました。

寺島さん私は日頃、若い人たちと接していてみんな偉いなと思っているのが、お金をかけずに自分たちなりのインテリアに作り上げていく力です。若い人たちはお金がないのでインテリア雑貨一つ選ぶのも、好みが見つかるまでいろんなところへ行き、自分たちで塗ったり組み合わせたりして作っている。熱意が素晴らしいですね。東北ではそういう人たちが増えたので、楽しくなってきているなと思います。

早坂日本ではまだなかなか、よほどお好きな人が日曜大工でされる程度ですが、欧米では自分の住まいは自分でメンテナンスするのが当たり前で、ペイントも普通に使われているんですよね。

保田氏デコラティブペイントが日本でいま芽生えつつありまして、私たちもアーティストと接点を持ち、アートな内装表現のひとつとしてもっと日本で広められないかと考えています。単に壁に色を塗るだけじゃなく、自分らしい表現方法で住まいづくりにペイントを利用していってほしいと思います。東北の人がインテリアにもっと心の潤いや安らぎを求められるよう、関西ペイントでも塗料、塗装の活かし方を探っていかなければいけませんね。

歌川さん一般の方はインテリアというと、家具を買ったり内装を替えたり、大掛かりなことを考えがちです。そこまでいかなくてもお部屋にいてすごくホッとする、そういう空間が1箇所でもあったら心地よくなるのではないかと思います。

保田氏ペイントが持っている空間演出の可能性には、もっと貢献できることがあるように思います。今日伺った東北での色々な動きは、住まい手の物理的なニーズを越えた心のニーズにICが応えて来たことの表れだと分かりました。皆さんの活動の相乗効果で、インテリアが人の心に潤いと活力をもたらす何か新しい東北発のウェーブとなって全国にも波及して行く事を大いに期待したいと思います。PXIもそこに貢献できるように係わっていきたいと思います。

 本日は、私たちが知らない情報や新鮮な話題、ICの方々も活発に活動されているという話が聞けて、大変有意義な会になりました。ありがとうございました。

MEMBER PROFILE
関口 和美
関口 和美Interior Coordinate Works (インテリアコーディネートワークス)代表
宮城インテリアコーディネーター倶楽部(mic)会長
新築戸建物件からモデルルーム、リフォームまでデザインやコーディネートを幅広く手掛ける。暮らしのセンスアップセミナーやイベントのプロデュース、子どもたちの次世代育成につながる教育活動にも力を入れている。震災後早くからICという立場で支援活動を開始し、全国からの支援を取りまとめたり、被災した小学校にカーテンを贈る活動なども続けている。
寺島 きぬ子
寺島 きぬ子フリーランス インテリア&カラーコーディネーター
日本色彩学会正会員、パーソナルカラー認定講師、編み物講師を経たのち、色に魅せられてフリーランスのコーディネーターとなる。主に戸建住宅やマンションのトータルコーディネートを手掛け、近年は老人施設や住宅リフォームにも携わる。その他、専門学校や高等学校における色彩講師、セミナーなど「どんな環境や人生においても、常に前向きに一生懸命生きていくこと」を信念に様々な活動を展開中。
歌川 えつこ
歌川 えつこゆとり くりえいと DE・STIJL・U デ・ステイル・ユー 主宰
設計事務所、ハウスメーカー、デザイン事務所を経て2001年「ゆとりの創造」をコンセプトに「ゆとり くりえいとDE・STIJL・U デ・ステイル・ユー」を立ち上げる。以来新築物件のインテリアコーディネート、モデルルームのインテリア・収納プロディユースを手掛け、年間の講座・講演活動は全国で70本を超える。2009年より一般社団法人 十人十色の部屋づくり推進会理事、東北支部代表も務めている。
保田 孝
保田 孝アイ・プランニング代表
関西ペイント販売(株)インテリアアドバイザー。住宅メーカーで設計、デザイン部門に在職中に全国のモデルハウスの設計を統括。そのノウハウをもとにインテリアのビジネスシステム構築やインテリアコーディネーターの育成を経てアイプランニングを設立。以降ゼネコン、家具メーカー等の事業開拓支援、企業・学校の講師、執筆活動を行う一方、インテリアコーディネーターの支援活動を続けている。
早坂 広行
早坂 広行関西ペイント販売株式会社
東北販売部営業部勤務。現在、福島地区を主に担当。担当分野は、建築・防食・工業分野。趣味は特にないが、週末の雑貨ショップを巡ってインテリア雑貨を購入するのが楽しみ。若い時代、サーフィンに熱中・溺愛だったが、体の成長止まらず引退する(現在も成長中)。

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